1番

こわばった手を握る。
震える瞼に触れる。
長い夢の終わりなら、
誰もが知っている。

2番

ここより先が怖い。
真っ暗な岩のすきま。
泳ぐように
左手を何度も動かした。

サビ1

「こんばんは!」 「こんばんは!」
「いつものあれひとつ!」
夕飯の買い物で
はしゃぐ君が好き 好き 好き 好き 好き

3番

ここより先が怖い。
少しだけ呼吸がつらい。
長い夢が永遠に続いてく、
そんな気がするよ。

サビ2

「こんばんは!」 「こんばんは!」
「いつものあれひとつ!」
「こんばんは!」 「こんばんは!」
レシートはいりません。

4番

こわばった手を握る。
冷えた頬温める。
橙に染められた幼い君が好き。

アウトロ

こんばんは。 こんばんは。
誰かそこにいたら
こんばんは。

1番

I hold your stiffened hands.
I touch your trembling eyelids.
If this were the end of the long dream,
Everyone would already know.

2番

What lies ahead frightens me.
A pitch-black gap between the boulders.
As if swimming,
I moved the left hand again and again.

サビ1

"Hello!" "Hello!"
"I’ll have one of the usual!"
While shopping for dinner
I love the lively, frolicking you—love love love love

3番

What lies ahead frightens me.
Breathing is a little hard.
The long dream keeps going on forever,
That's how it feels.

サビ2

"Hello!" "Hello!"
"I’ll have one of the usual!"
"Hello!" "Hello!"
I don't need a receipt.

4番

I hold your stiffened hands.
I warm your cold cheeks.
I love the childlike you, dyed a warm orange.

アウトロ

Hello. Hello.
If somebody's there
Hello.

生き埋めの唄 / 宮崎名緒子 歌詞

公開日: 2026/10/15

背景

「生き埋めの唄」は、ミヤザキナオコ(宮崎名緒子)さんが長年日本で歌い続けてきた素敵なインディーズのシングルです。2026年10月9日時点でのYouTube再生回数は78回です。

この曲はもともと「すきま」というタイトルで、2013年9月3日にミヤザキさんがSoundCloudにデモ音源を公開したのが始まりです。「すきま」は歌詞の中に登場する言葉です。

デモ版には、「幼い君」ではなく「若い君」になっているなど、細かな歌詞の違いがあります。

ミヤザキさんは長年、「すきま」というタイトルでこの曲をライブで歌ってきて(1、2)、いつかは「音源化したいな」と語っていました。

2017年7月18日に「すきま」のライブ映像がYouTubeに公開されました。この時点で、すでに歌詞は最新版と同じ内容になっていました。

ミヤザキナオコ「すきま」

2018年1月30日から2020年12月14日にかけてのライブでは、この曲を「生き埋めの唄」として歌っているので、おそらくこの頃にタイトルを変えたのだと思います。1

2021年8月に第一子が誕生した後、「生き埋めソングを筆頭に子どもが不幸になる曲は娘が成人するまでは2041年までは歌いたくない」と語っていました。あとは、2021年頃の時世柄で「生き埋めの唄」はセットリストから外したこともあったみたいです。おそらくそういう影響もあって、この曲への言及はほぼ途絶え、最近の2026年1月12日の一例を除いてほとんど見られなくなりました。

2026年2月、ミヤザキさんが「出産前に録音し、ラストを歌い直したバージョン【生き埋めの唄】を来月サブスク解禁予定です。」と伝えました。つまり、公式バージョンをしばらく公開せずに持っていたみたいです。そのバージョンは2026年3月3日にストリーミング配信が開始され、この投稿で見られる歌詞と聴ける音源は、そのバージョンです。

音楽グループ「Japone」でミヤザキさんとデュオを組んでいる相方の方が、この曲をこう表現しました。

ミヤザキナオコの夢の歌。生き埋めの記憶、回想。とてもリアルで本物だと思う。母性が暖かく、とっても悲しい。(2017年7月20日)

ミヤザキさん自身が、長年この曲について語ってきた内容はこちらです:

【地味曲だけど自分的にとても好きな曲】という認識だった【すきま】を好いていただけるのは、とてもとても幸せなことです。(2014年10月6日)

息子と一緒に生き埋めになった母になった夢をみて生まれた曲。未婚未出産だから想像でしかないのだけど、なんだろ、ちゃんと思い出はあった。(2017年7月18日)

昔から大切にしてきた曲。
レクイエムとして作った曲だったけれど
今は「犠牲者なんて出ない、みんな助かれ」の気持ちで歌っています。(2026年3月3日)

ジャケットは娘の描いた絵。
「なんだかかなしいかんじだわね」と曲を聴きながら描いてくれた。
生き埋めの唄は、昔はすきまというタイトルだった曲で
ずっと気に入っている。
そもそもは親だけ助かる感じで作ったんだけど
今は全員助かるという解釈で歌っています。 (2026年3月3日)

補足すると、レクイエムとは、亡くなった人を偲び、追悼し、その魂の安息を祈るために作られる楽曲のことです。この点は、タイトルが「生き埋めの唄」に変わった理由を考える手がかりになるかもしれません。というのも、「生き埋めの唄」というタイトルは、生き延びることや救出といったテーマとも関わっているように思えるからです。

歌詞だけを見ると、どの行が誰のセリフなのかがはっきり示されていませんが、少なくとも二人の人物が関わっているように読めるし、そのうちの一人は「真っ暗な岩のすきま」に閉じ込められている状況のようです。例えば「こんばんは!」や「いつものあれひとつ」といった部分は、どちらが言っているのかが曖昧に感じられます。

しかし、これをもうちょっとはっきりさせる手がかりが二つあります:

  1. ミヤザキさんの解説では、この曲は当初レクイエムとして書かれ、息子と共に生き埋めになる母親になった夢に関連しているとのことです。カバーアートも子供が生き埋めになっている様子を描いているように思えます。
  2. よく聞くと、曲の中で違う「声」で歌っている部分があるように感じます。最初の「こんばんは」の繰り返しは子供の声っぽく聞こえて(大人の声と重なっているようにも聞こえるかもしれないです)、そのすぐ後の「夕飯の買い物で」は大人の声に聞こえます。元のSoundCloudのデモにもこの重なった声があって、歌詞のDetails欄でもどの行に「」や!をつけるかが細かく指定されています(この投稿の歌詞でもそのまま再現しました)。ライブの「すきま」でも、ミヤザキさんは「こんばんは」の部分で普段の歌い方を変えて、明らかに子供っぽい声で歌っています。

今読んでいるこの投稿を公開した直後で、ミヤザキさん本人から教えていただいたより詳しい背景です:

「生き埋めの歌」のサビの子供の声は、地震で埋まる前の、みんなと街が元気だった頃の記憶の声。自分の子供がお店屋さんで「いつものこれください!」と元気に言っていた記憶であると 最後は、子供がガレキの中から「助けて」と救助隊に呼びかける声である

余談:

  • 「こんばんは」は英語でよく "good evening" と訳されますが、英語の "good evening" は少し堅い・フォーマルな印象があります。日本語の「こんばんは」はもっとカジュアルな感じがするので、今回は “hello” と訳しました。
  • しばらくの間、最後のほうの「こわばった手」っていう部分を「根が張った手」だと思い込んでいました。地下に埋まって身動きが取れないものが根を張っていくイメージがしっくり来ていたし、ミヤザキさんが曲のラストを歌い直したって話していたから、そのときに歌詞を変えたのかなって思っていました。ただ、その部分を何度かゆっくり聞き直して(あとSoundCloud版とライブ版が明らかに「こわばった」って言ってるのも確認して)、今は最初の一行の繰り返しだと思っています。

この曲の背景をもっと知ることができて、本当によかったです。最近はこういうことをよくやっています(たとえばkyoooの「夏がくれば」についても書きました)。太平洋の向こうのどこかで、私がちょうど中学校に入ったころ(2013年9月ごろ)に生まれた素敵な曲に、今になって出会って感動することがよくあるのです。最近は、アーティストや作品の背景について調べるのが楽しいです。

この曲を最初に聴いたのは、Mazu SircleさんがInstagramのストーリーで、近日公開の短編映画「大地の子」(2026年11月21日公開予定)を紹介していたときでした。教えてくれてありがとうございます!

ミヤザキナオコさんについてもっと知りたい方は、こちらへどうぞ:

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出典

  1. 1. 別のツイートでは初演が2017年頃だったように読めますが、「2018年」の誤記と思われます。 ↩